本ページでは、簿記において日常業務の中で発生する仕訳の作成方法を説明する。 2024/10/13日時点における簿記3級の範囲のみを扱う。
簿記の概要については簿記を参照。
3級の決算整理仕分けについては簿記 決算編 3級を参照。
以下のものは「現金」という勘定科目に分類される。
帳簿をつける際に、帳簿上の現金と実際に手元にある現金との間で過不足が生じた場合は、勘定科目「現金過不足」を用いて、過不足を解消する。 ただし、過不足の原因が判明した際は、勘定科目「現金過不足」を解消する仕訳を作成する。
現金過不足の場合の仕訳例を以下に示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 帳簿上では200円あるはずが、手元の現金が100円しかないので差額を埋める | 現金過不足 | 100 | 現金 | 100 |
07/02 | 備品購入の仕訳を作り忘れていたことが判明したので、現金過不足を解消 | 備品 | 100 | 現金化不足 | 100 |
交通費などの細かい支出に対していちいち仕訳を作成するのは面倒なため、多くの企業では、ある程度の支出が溜まってから仕訳をまとめて作成するインプレストシステムを採用している。 この仕組みでは、各部の用度係に現金を渡し、定期的にお金の使途を用度係から経理部へ報告することで一気に仕訳を作成している。
経理部から各部用度係へ渡される現金を小口現金と呼び、この現金の移動を、勘定科目「小口現金」を用いて仕訳する。
小口現金の仕訳例を以下に示す。 7/3と7/5の仕訳は、用度係から報告を受けた時にまとめて作られたものであることに留意されたい。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 営業部へ小口現金を渡す | 小口現金 | 100000 | 現金 | 100000 |
07/03 | 営業部が交通費として100円使った | 旅費交通費 | 100 | 小口現金 | 100 |
07/05 | 営業部が交通費として100円使った | 旅費交通費 | 100 | 小口現金 | 100 |
07/08 | 営業部へ小口現金を補充する | 小口現金 | 200 | 現金 | 200 |
預金に区別される勘定科目には以下のものがある。
複数の銀行に同種の口座を持っている場合は、勘定科目に銀行名を付加する。(例:当座預金 ほずみ銀行
, 普通預金 ゆちょ銀行
当座預金とは、小切手を利用するために必要な銀行口座。 開設前に審査があり、一般個人が作成することは難しい。
小切手とは、有価証券の1つであり、現金を介さずにスムーズに任意の額を受け渡すことができる。 AさんからBさんへ1000円を支払う場合の流れを以下に示す。
また、銀行と当座借越契約を結んでいる場合、当座預金の残高を超える額の小切手を振り出すことができる。 仕訳は通常の小切手と同様の形になるが、期末時点で借越残高が残っている場合は、決算整理仕訳を作成する必要がある。(決算整理仕訳の章で解説)
勘定科目について、出入に伴う手数料は支払手数料、受け取った利息は受取利息とする。
預金口座の操作と利息の受け取りに関する仕訳を以下に示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 1000円を普通預金へ預け入れる(手数料100円) | 普通預金 | 1000 | 現金 | 1100 |
支払手数料 | 100 | ||||
07/03 | 1000円を普通預金から引き出す(手数料100円) | 現金 | 1000 | 普通預金 | 1100 |
支払手数料 | 100 | ||||
07/05 | 1000円を普通預金から当座預金へ振り替える | 当座預金 | 1000 | 普通預金 | 1000 |
07/08 | 普通預金に利息が発生する | 普通預金 | 100 | 受取利息 | 100 |
小切手を振り出した時は、振り出した時点で当座預金の資金が減少したものとみなす。
また、小切手を受け取った側は、小切手を振り出した人が誰かによって、以下のように勘定科目が変わる。
小切手を振り出し/受け取り時の仕訳例を以下に示す。 代金として受け取ったものが小切手であっても、他人振り出しのものであれば、勘定科目を現金とすることに注意する。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 10万円のオフィスチェアを小切手で購入する | 備品 | 100000 | 当座預金 | 100000 |
07/03 | 売り物であるパソコンが売れた(支払いは他人振出小切手) | 現金 | 200000 | 売上 | 200000 |
07/05 | 売り物であるパソコンが売れた(支払いは7/1に振り出した自分振出小切手) | 当座預金 | 100000 | 売上 | 100000 |
簿記において売買取引の記法には分記法と三分法の2種類がある。 どちらの記法を使うかは、通常、以下のように選択される。
また、ツケ払いとした場合の勘定科目は、記法には関係なく取引対象が商品か否かによって、以下のマトリックスの通りに決定される。
商品を | 商品以外を | |
---|---|---|
買ったとき | 「買掛金」(負債) | 「未払金」(負債) |
売ったとき | 「売掛金」(資産=債権) | 「未収入金」(資産=債権) |
会社によっては取引対象の性質に関わらず分記法を用いる場合があるが、2024/08/04時点の簿記3級においては、分記法による商品取引は範囲外である。
三分法において、売買取引の勘定科目は以下の通りとなる。 三分法は商品の取引に対してのみ用いられる。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。 文房具屋にとって鉛筆は商品であるため、鉛筆を対象とする売買取引は三分法で記述する。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆100本を単価10円で仕入れた(一部ツケ払い) | 仕入 | 1000 | 買掛金 | 200 |
現金 | 800 | ||||
07/03 | 鉛筆50本を単価20円で売った(一部ツケ払い) | 現金 | 900 | 売上 | 1000 |
売掛金 | 100 | ||||
07/03 | 鉛筆50本を単価25円で売った(全額現金払い) | 現金 | 1250 | 売上 | 1250 |
仕入、売上に伴って発生する諸費用の扱いについて以下のマトリックスに示す。
本来支払うべき主体 | |||
---|---|---|---|
買主 | 売主 | ||
実際に支払った主体 | 買主 | パターン\(A\) | パターン\(B\) |
売主 | パターン\(C\) | パターン\(D\) |
パターン\(A\)について、買主負担の諸費用を買主が支払った場合は、勘定科目「仕入」に合算する。 簿記には、仕入にかかった費用は全て商品原価に充てるという考え方があるためである。 (仕入に伴って発生する運送費などの諸費用は、付随費用や仕入諸掛などと呼ばれる。)
パターン\(D\)について、売主負担の諸費用を売主が支払った場合は、売上には合算せず、勘定科目「発送費」(費用)を用いる。
パターン\(B\)について、売主負担の諸費用を買主が支払った場合は、以下の2通りの仕訳方法がある。(どちらでも構わない)
パターン\(C\)について、買主負担の諸費用を売主が支払った場合は、簿記3級の範囲外のため割愛。
分記法は、商品の売買取引にも使われることがあるが、その場合の勘定科目は以下の通りとなる。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。 ただし商品取引については分記法で記述している。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆100本を単価10円で仕入れた(一部ツケ払い) | 商品 | 1000 | 買掛金 | 200 |
現金 | 800 | ||||
07/03 | 鉛筆50本を単価20円で売った(一部ツケ払い) | 現金 | 900 | 商品 | 500 |
売掛金 | 100 | 商品売買益 | 500 | ||
07/03 | 鉛筆50本を単価25円で売った(全額現金払い) | 現金 | 1250 | 商品 | 500 |
商品売買益 | 750 |
分記法は仕訳ごとに商品の仕入れ値を求める必要があり、実務的ではないため、商品の売買取引については三分法を用いることが主流となっている。
仕入れ値の求め方には、先入先出法と移動平均法の2種類がある。どちらも計算が面倒くさい。
先入先出法は、商品Aの原価を、既存の在庫のうち最も古い在庫を仕入れた時の単価を商品Aの原価とする方法である。 ただし、商品は古いものから売るものとし、商品を1つずつ在庫から取り出しながら原価の算出を行う。
移動平均法は、商品Aの原価を、在庫の商品の1つ1つの平均仕入れ値とする方法である。
売買取引が成立したものについて、返品が行われた場合、もとの売買取引の逆仕訳を作成する。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。 文房具屋にとって鉛筆は商品であるため、鉛筆を対象とする売買取引は三分法で記述する。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆100本を単価10円で仕入れた(一部ツケ払い) | 仕入 | 1000 | 買掛金 | 200 |
現金 | 800 | ||||
07/03 | 触れただけで折れたので返品した | 現金 | 800 | 仕入 | 1000 |
買掛金 | 200 |
売買取引の中では、代金の一部または全てを予め支払っておくケースがあり、このときに支払われた代金を内金や手付金と呼ぶ。
このようなケースについて、以下に示す勘定科目を用いる。 また、売買取引が完了し、仕入/売上の仕訳を作成する際には、これらの勘定科目を含める。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。 文房具屋にとって鉛筆は商品であるため、鉛筆を対象とする売買取引は三分法で記述する。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | A社に手付金を小切手で払った | 前払金 | 100 | 当座預金 | 100 |
07/03 | A社から鉛筆100本を単価10円で仕入れた(一部ツケ払い) | 商品 | 1000 | 買掛金 | 200 |
現金 | 700 | ||||
前払金 | 100 | ||||
07/05 | B社に手付金を小切手で受け取った | 現金 | 100 | 前受金 | 100 |
07/03 | B社から鉛筆100本を単価15円で売った(一部ツケ払い) | 現金 | 1000 | 売上 | 1500 |
売掛金 | 400 | ||||
前受金 | 100 |
売買取引において支払いがクレジットカードで行われた場合、勘定科目は「クレジット売掛金」または「クレジット買掛金」となる。 売手が支払うクレジットカード会社への取扱手数料について、その勘定科目は「支払手数料」とする。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆10本を単価20円で売った(クレカ支払い,クレジット取扱手数料2%) | クレジット売掛金 | 196 | 売上 | 200 |
支払手数料 | 4 |
手形は、小切手と同様に代金支払いや借用証書代わりに使われるもので、その実体は支払い期日、支払い額などが記載された紙である。 手形は当座預金でのみ利用できる。 二者間で使われる約束手形と三者間で使われる為替手形があるが、3級では約束手形のみ扱う。
約束手形を作成して支払う側を振出人、約束手形を受け取る側を名宛人と呼ぶ。
約束手形を用いた売買取引の流れは以下の通りである。
仕訳1では、勘定科目について、売掛金、買掛金の代わりに「受取手形」、「支払手形」を用いる。 また、仕訳2では、その仕訳は受取手形(債権)または支払手形(負債)を当座預金で打ち消すものとなる。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆10本を単価20円で仕入れた | 仕入 | 200 | 支払手形 | 200 |
07/31 | 手形が決済された | 支払手形 | 200 | 当座預金 | 200 |
08/01 | ノート3冊を単価30円で売った | 受取手形 | 90 | 売上 | 90 |
08/31 | 手形が決済された | 当座預金 | 90 | 受取手形 | 90 |
実務において手形は、通常、買掛金の支払いの先延ばしに使われる。 例) 買掛金で購入→x日後に買掛金を手形で支払い→手形の期日に手形を決済
手形を借用書として、お金の貸し借りをした場合、勘定科目には「手形借入金」または「手形貸付金」を用いる。
とある文房具屋の、商品の売買に関する仕訳を以下に示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 10万円借りた | 現金 | 100000 | 手形借入金 | 100000 |
07/31 | 10万円返した | 手形借入金 | 100000 | 当座預金 | 100000 |
08/01 | 20万円貸した | 手形貸付金 | 200000 | 現金 | 200000 |
08/31 | 20万円返された | 当座預金 | 200000 | 手形貸付金 | 200000 |
手形以外のもの(口約束、覚書、証書)を借用書として利用した場合、勘定科目には単に「借入金」または「貸付金」を用いる。
紙の手形の代替として電子記録債権を用いた場合、勘定科目には「電子記録債権」または「電子記録債務」を用いる。
固定資産とは、会社が長期に渡り保有する資産であり、3級で扱う有形固定資産の例として以下が挙げられる。
これらは資産であり、仕訳時にも現金などの資産と同等に扱われる。 ただし、固定資産は商品ではないため、売買の仕訳については分記法で記述しなければならない。
固定資産の売買取引の例を示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
06/30 | 土地を購入 | 土地 | 1000000 | 現金 | 1000000 |
12/01 | 土地を売却 | 現金 | 1100000 | 土地 | 1000000 |
固定資産売却益 | 100000 |
経費の例を勘定科目と合わせて下表に示す。
例 | 勘定科目 |
---|---|
事務所の電気代 | 水道光熱費 |
事務所の家賃 | 支払家賃 |
入会しているクラブの会費 | 諸会費 |
従業員が立て替えた交通費の支払い | 旅費交通費 |
事務所の火災保険の料金 | 支払保険料 |
事務所で使う筆記用具などの消耗品の購入費用 | 消耗品費 |
収入印紙など、経費として処理する税金の支払 | 租税公課 |
理論的には、筆記用具は費用ではなく資産として扱われるべきだが、資産として扱うと減価償却など色々面倒くさくなってしまう。 そのため実務では多くの場合筆記用具のような消耗品などは費用として処理される。 ただし、切手などの換金性の高いものに関しては決算整理仕訳で資産へ換算する処理が行われる。(後述)
簿記試験では級に依らず全ての場合において、消耗品を費用として扱う。
収入印紙とは、切手のようなものであり、一定の条件を満たした領収書や契約書などに貼付する義務が印紙税法により定められている。 なお、収入印紙の購入は、それを貼付する書類の作成に対する税金=印紙税を支払うことを意味する。
商品券を使った支払い時には、「商品券の発行者、商品券を使う消費者、商品を販売する商店」の3者が、以下のような流れで取引を行う。
商店が消費者から受け取った商品券の勘定科目は「受取商品券」(資産)である。
以下にとある文房具屋の仕訳の例を示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 鉛筆を売った (商品券で支払い) | 受取商品券 | 10 | 売上 | 10 |
07/02 | 商品券を換金した | 普通預金 | 10 | 受取商品券 | 10 |
お金を貸した時は、資産の勘定科目「貸付金」を用いて、お金を借りた時は、負債の勘定科目「借入金」を用いる。 ただし、借用証書が手形である場合、勘定科目は「手形貸付金」と「手形借入金」となることに留意する。
また、役員、従業員に対してお金を貸し付けた場合、勘定科目は「役員貸付金」「従業員貸付金」となる。
以下に仕訳の例を示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/01 | 口約束で100万円借りた | 現金 | 1000000 | 借入金 | 1000000 |
07/02 | 利息10万円とともに100万円を返した | 借入金 | 1000000 | 現金 | 1100000 |
支払利息 | 100000 | ||||
07/03 | 口約束で10万円貸した | 貸付金 | 100000 | 現金 | 100000 |
07/04 | 利息1万円とともに10万円が返済された | 現金 | 110000 | 貸付金 | 100000 |
受取利息 | 10000 |
闇金の帳簿でしょうか。。。
従業員に対する給与を支払う際には、以下のような費用についても考慮した上で仕訳を作成しなければならない。
これらの費用は、企業が、源泉徴収として給与から差し引いておき、翌月に税務署などへ納付する。 このとき、差し引きから納付までの間は、差し引いた額は企業にとって納付先への負債となる。
給与は企業にとって費用であるため、支払いの仕訳には勘定科目「給料」(費用)を用いる。 また、源泉徴収として差し引いた額の勘定科目は、「社会保険料預り金」「所得税預り金」とする。 加えて、社会保険料は従業員と会社で折半して支払うものであるため、会社負担分については、勘定科目「法定福利費」とする。
以下に7月の給与支払いと税金等の納付との仕訳を示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
04/25 | 給料を支払う | 給料 | 200000 | 当座預金 | 160000 |
所得税預り金 | 20000 | ||||
社会保険料預り金 | 20000 | ||||
05/10 | 預り金を納付する | 所得税預かり金 | 20000 | 当座預金 | 60000 |
社会保険料預り金 | 20000 | ||||
法定福利費 | 20000 |
雇用保険料は、企業と従業員が折半して支払うものである。 通常企業の方が負担額が大きい。
企業は、6月1日~7月上旬の間に年に1度だけ、全従業員のその年度分の雇用保険料の算出と納付を行う。 この作業を年度更新と呼ぶ。
年度更新によって、1年分の雇用保険料の納付は7月上旬に行われるが、このとき支払われる従業員負担分の拠出元は以下の通りとなる。
以上より、雇用保険料に関係する3つの勘定科目を以下に示す。
勘定科目 | 分類 | 負担者 | 説明 |
---|---|---|---|
法定福利費 | 費用 | 企業 | 雇用保険料の企業負担分 |
社会保険料預り金 | 負債 | 従業員 | 雇用保険料の従業員負担分のうち、従業員の4~6月給与から源泉徴収した分 |
従業員立替金 | 資産 | 従業員 | 雇用保険料の従業員負担分のうち、企業が立て替えた分 7~3月分の給与を支払う際には、「従業員立替金」を減額していくことに留意する |
以下に年度更新と7月給与支払いとの仕訳を示す。
日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | ||
07/05 | 雇用保険料の支払い | 法定福利費 | 100000 | 当座預金 | 140000 |
社会保険料預り金 | 10000 | ||||
従業員立替金 | 30000 | ||||
07/25 | 給料を支払う | 給料 | 200000 | 当座預金 | 160000 |
所得税預り金 | 20000 | ||||
社会保険料預り金 | 10000 | ||||
従業員立替金 | 10000 |
使途が定まっていない支払いに対しては勘定科目「仮払金」が使われ、何の代金であるかが不明な入金に対しては勘定科目「仮受金」が使われる。 この場合、後から使途や経緯が判明した時に、仮払金・仮受金を打ち消す仕訳を作成する。
特に、ICカードにチャージしたときには、ICカードを仮払金という資産とみなして処理することが理論的に正しい仕訳となる。 ただし、簡単のためにICカードにチャージした時点で、チャージ額全額を旅費交通費として処理する場合もある。
保証金とは、何らかの取引を行う際に預けておくお金であり、不動産貸借時に預ける敷金が例として挙げられる。 保証金を支払った場合、または、保証金が返還された場合は、勘定科目「差入保証金」(資産)を使う。
保証金が返還されない場合はどうなるのか?要調査
純資産とは、資産から負債を除いたものであり、資産のうち自己資本に相当する部分である。 例として、以下が挙げられる。
純資産は前年度に溜めた利益や、今まで株主やオーナーが出資した額を表しており、純資産分の現金を保留しているとは限らない。 現金で出資してもらった分の純資産が1億円あったとしても、1億円以上の赤字であれば純資産分の現金は消滅していることになる。
出資または増資を受けるとき、仕訳の借方には受け取った資産、貸方には純資産「資本金」を用いる。 個人商店の場合は、出資者個人の資金を店へ出資することとなる。 株式会社の場合は、株を発行して得た利益が資金となる。